金沢大学大学院医薬保健学総合研究科 内科系医学領域放射線科学

Department of Radiology, Kanazawa University Graduate School of Medical Sciences

診療

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IVR

「生活の質が豊かになる医療」をめざして

 IVR (Interventional Radiology、インターベンショナルラジオロジー)とは「放射線診断技術の治療的応用」という言葉で説明されることもありますが、X線透視装置、超音波診断装置、X線CTなどの画像診断機器のガイド下に経皮的に病巣に到達し治療を行う低侵襲治療法のことです。現在では血管内治療を代表格として「低侵襲治療=IVR」と広く認識されるに至り、多くの分野で技術的・医学的に確立され注目を集めています。IVRは画像診断機器の進歩とともに急速に発展・普及してきた領域ですが、高齢化が深刻化する状況において、その低侵襲性からIVRの有用性・必要性が飛躍的に高まっています。

当教室は国内に血管造影法をいち早く取り入れ、肝癌に対する肝動脈化学塞栓療法を中心とするカテーテル治療の領域を開拓し、本邦におけるIVRの発展の歴史を創成期より担い、IVRの技術向上と普及に寄与してきました。既存の技術の洗練のみならず現在発展途上の新技術を積極的に取り入れ確実な医療へと発展させるため日々努力しております。現在では冠動脈疾患や脳血管内治療以外の全ての領域でのIVRを一手に引き受けており、金沢大学附属病院を活動拠点として、IVR技術の標準化を図り北陸地方を中心として地域医療に貢献しています。我々はIVRを通して病気から受ける様々なストレスから患者様を解放し「生活の質が豊かになる医療」をめざしています。

当教室では悪性腫瘍を中心とする腫瘍の制御、血管病変の制御、緩和療法、診断支援、外科手術支援など多岐にわたるIVRの全ての分野を血管系・非血管系を問わず網羅しております。これらを実際の臨床現場で日常的に実現するためには、各診療科との厚い信頼関係と緊密な連携が不可欠です。この体制は、当院のみならず関連病院を含めて広く浸透しています。

当院のクリーンルーム化された血管造影室には3台のフラットパネルDSA装置が配備され、内1台には64列MDCTを併設しIVR-CTシステムとして活用しています。さらに麻酔器を常時設置し全身麻酔下のIVR施行を可能にしています。また手術室には移動式DSA装置を配備し、大動脈疾患を始めとする複雑な血管病変に対する高度なハイブリッド手術や、産婦人科疾患などの手術支援に活躍しており緊急時にもすばやく対応可能な体制になっています。

我々が所属する日本IVR学会においては、2002年より認定専門医制度が発足し現在までに全国で700名余りの専門医が認定されています。当教室および関連病院においては約20名の専門医が所属しており、IVR専門医修練施設として金沢大学附属病院を始めとして富山県立中央病院、富山県厚生農業共同組合連合会高岡病院、石川県立中央病院、福井県済生会病院、福井県立病院が認定されています。

肝臓病に対する集学的治療

IVRによる腫瘍制御、特に肝腫瘍の病態解明と血管内治療はわれわれが開発し今やその技術が世界標準になっている領域です。慢性肝疾患、すなわち肝硬変や慢性肝炎などを背景として生じる様々な病態、特に肝細胞癌に対する集学的治療の中で、血管造影手技を駆使した肝細胞癌の精密な血行動態観察から多段階発癌の過程を明らかにし、病態に応じた血管内治療の選択、とりわけ肝動脈化学塞栓療法の発展と普及に貢献してきました。さらに肝動注化学療法やラジオ波焼灼術を積極的に施行し治療成績向上に寄与してまいりました。また門脈圧亢進症に伴う食道胃静脈瘤、難治性腹水、肝性脳症などの症状に対して画像診断による詳細な病態解析のもとに経頸静脈肝内門脈大循環短絡術(先進医療)やバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)などを行っています。安直に低侵襲治療に終始するだけではなく、まずは疾患の病態解明に力を注いでおり、病態に則した低侵襲治療の選択を推進しています。

大動脈ステントグラフト治療

 大動脈疾患に対しては世界的なステントグラフト治療の台頭とともに本院でも臨床応用を1990年代に開始しました。金沢大学を中心に北陸地方に広く本治療を普及させ、大動脈疾患の治療成績向上に寄与してきました。これまでに約600症例のステントグラフト治療を施行してきた実績があり、近年では年間約100件の症例数があり国内でも有数のステントグラフト実施施設になっています。当院で本治療が急速に発展してきた背景には放射線科と心臓血管外科との強力な共同体制の確立があり、大動脈疾患のみならず、心臓疾患や腹部内臓動脈領域、腸骨動脈領域、大静脈領域など多岐にわたる血管病変に対する血管内治療を施行しています。我々は現在の国内での治療水準を超えるレベルでの低侵襲治療の確立を目指しています。放射線科、心臓血管外科ともにステントグラフト治療の指導医を複数有し、ステントグラフト製造メーカーともタイアップし、北陸地方では唯一緊急時のステントグラフト治療を随時施行可能な体制が整っており、さらに標準的なステントグラフト治療適応を越えた困難症例に対する特殊な治療戦略への挑戦も続けております。また、当初より北陸地方のみならず国内の主要大学病院等への技術援助や技術指導を行ってきており、近年ではアジア諸国の医療支援を行った実績があります。

悪性腫瘍を中心とする腫瘍に対するIVR

 肝細胞癌に対する低侵襲治療以外にも多岐にわたる腫瘍IVRを展開しています。骨軟部腫瘍に対する動脈塞栓術や動注化学療法、ラジオ波焼灼術、経皮的椎体形成術、腫瘍生検、脊髄動静脈奇形治療など、整形外科領域の多くの症例に介入しています。また、耳鼻咽喉科と協力し咽頭癌や喉頭癌を始めとする頭頸部癌に対する放射線治療を行うとともに超選択的動注化学療法を1990年代に開始し、機能損失を伴わない根治治療を目指し良好な治療成績を挙げております。呼吸器外科や呼吸器内科との連携の元に、肺腫瘍に対するCTガイド下生検術や胸腔鏡下手術前CTガイド下VATSマーカー針留置術を日常的に施行しており、診断および手術支援に大きく貢献しています。

ラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation; RFA)

ラジオ波焼灼療法(RFA)とは

 直径1.2~1.5mmほどの電極針を腫瘍内に挿入し、高周波の電流を流すことによって熱を発生させ、腫瘍細胞を死滅させる治療法です。局所麻酔で体表から針を刺入して行うことができる低侵襲な治療で、入院期間が短く、全身麻酔や手術のリスクが高い患者様に対しても行うことができるという利点があります。

保険適応について

 本邦では、肝悪性腫瘍に対して保険適応が認められ、肝細胞癌の標準的治療法となっています。腎癌などのいくつかの腫瘍についても手術と遜色のない短期~中期成績が報告されていますが、今のところ肝悪性腫瘍以外での保険適応は認められていません。そのため、当院では肝臓以外の腫瘍については自由診療(全額自費負担)で治療を行っています。費用は40~50万円かかることが多いですが、入院中の処置や期間などによってかなりばらつきがあります。

自由診療でラジオ波焼灼療法(RFA)を実施している腫瘍

腎癌

 様々な理由により従来の外科的治療の適応とならない患者様がRFAの対象となります。T1a(4cm以下)に分類される腫瘍で、特に3cm以下、外方突出型のものがよい適応です。多くの場合、治療は1~2時間程度で終了し、治療後3~4日で退院となります。術後の腎機能の低下もごくわずかで、腎機能障害を有する患者様でも人工透析の導入を避けることができます。

肺癌

 様々な理由により従来の外科的治療の適応とならない患者様がRFAの対象となります。個数が3~4個以内で、大きさが2~3cm以下の腫瘍が適応となります。転移を有する場合には適応とはなりません。治療は1~2時間程度で終了し、治療後3~4日で退院となります。

骨腫瘍

 類骨骨腫は良性腫瘍ですが、痛みを伴うことが特徴の一つです。低侵襲なRFAにより劇的な除痛効果を得ることができます。若年者が罹患することが多く、RFAはよい治療選択肢となっています。

 転移性骨腫瘍は激しい痛みを伴うことがありますが、薬物療法や放射線治療といった標準的な治療が奏功しない場合にRFAによって症状緩和をはかります。

小径腎癌に対する凍結療法の導入について(2017年3月治療開始)

 近年、小径腎癌に対する局所治療として、「凍結療法」が保険適応となっています。これは、RFAと同様、局所麻酔で体表から針を刺入して行うことができる低侵襲な治療ですが、腫瘍を凍結してがん細胞を破壊します。入院期間や治療効果などはRFAと大差ありません。これまで保険診療でありながら治療設備の普及がなかなか進まず、北陸地方でこの治療を受けることはできませんでした。

 金沢大学病院では新たに凍結治療装置を導入し、2017年3月から小径腎癌に対する凍結療法を開始しております。

緊急要請に対して

外傷性出血や腫瘍破裂など緊急的にIVRが必要な状況においても即座に対応可能な体制を確立しており、また関連病院での緊急症例に対しても画像診断のみならずIVRの緊急対応を行っています。北陸地方の他大学の緊急要請に対しても援助を行った実績があります。
多種多様な病態に応じて様々な医療技術が開発され、低侵襲治療としてのIVR技術も年々複雑化していますが、多様化する病態に則した医療技術の投入が必要です。そのためには画像診断を中心とする病態の正確な理解が必要不可欠であり、われわれは短絡的にIVRを適用するのではなく、まずは病態解明に全力を尽くしております。その上で病態に則したIVR技術の最大限の有効活用を提案し慎重かつ確実なIVR技術を提供しています。この思想が「生活の質が豊かになる医療」につながると信じております。

診療実績表

手技 平成26年度 平成27年度
頭頚部領域
頭頚部腫瘍動注化学療法 61 58
その他 4 3
胸部領域
経皮的肺生検 45 66
VATSマーカー 49 31
TEVAR 18 17
BAE 9 11
その他 24 19
腹部領域
TACE 169 189
腹部緊急塞栓術 23 36
PTPE 10 11
その他塞栓術 23 18
肝動注リザーバー 50 23
EVAR 33 35
その他血管系 28 35
PTCD 17 25
PTAD 22 11
その他非血管系 12 16
生殖・泌尿器領域
AVS 44 49
経皮的生検 12 11
産科出血 3 5
その他 18 16
骨軟部・四肢領域
骨軟部腫瘍塞栓術 44 49
経皮的生検 12 11
骨軟部腫瘍生検 3 5
骨盤骨折塞栓術 18 16
腸骨動脈ステント・ステントグラフト 12 11
シャントPTA 3 5
その他 18 16
合計 772 780

 

 

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