医薬保健学総合研究科
内科系医学領域
放射線科学

金沢大学大学院 医薬保健学総合研究科 内科系医学領域

放射線科学

Research Information研究紹介

01.画像診断

消化器疾患の各種画像所見の解析と画像による病態の解明は当科の中心的テーマの一つです。特に肝細胞癌の多段階発癌を明らかにし、肝細胞癌の画像診断を確立したことで世界的評価を得ています。近年は肝特異性造影剤の機序を解明し、肝癌の早期診断や肝良性腫瘍の診断に寄与しています。胆道・膵領域では膵管癌の早期診断と進展度評価の研究のほか、膵内分泌腫瘍、胆道腫瘍、急性膵炎などの画像解析を進めています。IgG4関連疾患ではこれまでに多くの臓器の画像所見について報告し、この疾患の病態の解明に取り組んでいます。中枢神経領域ではMRスペクトロスコピーを用いた脳腫瘍診断に関する研究などを進めています。

当教室では小林 聡 教授を中心に、肝疾患の画像診断の研究に取り組んでいます。血流画像(Dynamic CT・動脈造影下CT)やGd-EOB-DTPA造影MRIを主軸に、Dual energy CTや最新のMR技術を用いた画像解析も行っています。また病理学教室、消化器内科、肝胆膵・移植外科、さらに他施設との共同研究により、病理病態の解明や治療への応用につながる成果を上げています。

2017年以降の研究成果

  • 肝腫瘍に対する血管内治療後の重篤な合併症である胆管壊死に関する総説を発表しました。<小林 聡 教授. Cancers (Basel). 2020;12(9):2596.>
  • Gd-EOB-DTPA造影MRIの動脈相の画質不良(transient severe motion artifact)の原因について解析を行いました。<池野 宏 大学院生、小林 聡 教授. Japanese journal of radiology. 2020;38(2):165-177.>
  • Hepatocyte fraction indexを使用し、肝細胞癌に対する分子標的治療が肝予備能に及ぼす影響の評価を行いました。<正元雄大 大学院生、小林 聡 教授. ISMRM & SMRT Virtual Conference & Exhibition. 8-14 August 2020.>
  • 細胆管癌のDynamic CT所見の特徴を明らかにし、病理組織像および動脈造影下CT所見との比較検討を行いました。<小坂一斗 准教授. Abdominal radiology (New York). 2017;42(3):861-9.>
  • 硬変肝におけるGd-EOB-DTPA造影MRI肝細胞相でドーナツ状高信号を呈する非多血性結節の画像所見および臨床病理学的特徴について報告しました。<小坂一斗 准教授. European radiology. 2019;29(12):6489-6498.>
  • 腫瘤形成性肝内胆管癌の亜型であるlarge duct typeとsmall duct typeでは、18F-FDG PET/CT所見とglucose transporterの発現が異なることを明らかにしました。 <小坂一斗 准教授. Clinical Nuclear Medicine. 2020;45(6):e267-e273.>
  • 肝内胆管癌の早期診断に関する総説を発表しました。<濱岡麻未 医員、小坂一斗 准教授. Japanese journal of radiology. 2019;37(10):669-684.>
  • 放射線治療による肝炎の病理像と画像所見に関する総説を発表しました。<高松繁行 講師. Japanese journal of radiology. 2018;36(4):241-56.>
  • 肝細胞癌におけるβ-cateninとHNF4αの両者の発現がGd-EOB-DTPA造影MRI肝細胞相における増強率の増加に関与することを示しました。<北尾 梓 講師. Hepatology Research. 2018,48(2):205-216.>
  • Gd-EOB-DTPA造影MRI 肝細胞相で高信号となるOATP1B3陽性肝細胞癌と限局性結節性過形成との画像上の鑑別点の解析を行いました。<北尾 梓 講師. AJR American journal of roentgenology. 2018;211(2):347-57.>
  • 肝細胞癌におけるGd-EOB-DTPA造影MRI所見の分子遺伝子学的背景についての総説を発表しました。<北尾 梓 講師. European radiology. 2020;30(6):3438-3447.>
  • 肝細胞癌の生物学的特性を予測する画像バイオマーカーをまとめた総説を発表しました。<米田憲秀 助教. RSNA 2017 Magna Cum laude受賞. Japanese journal of radiology. 2019;37(3):191-208.>
  • 肝細胞癌におけるGd-EOB-DTPA造影MRI肝細胞相の腫瘍辺縁高信号と過形成との関連を明らかにしました。<米田憲秀 助教. Abdominal radiology (NY). 2018;43(8):2103-2112.>
  • 分子病理学的分類に基づいた脂肪を内包する肝細胞癌の画像、臨床病理学的特徴の検討を行いました。<小坂康夫 大学院生、米田憲秀 助教. 2019年 第78回日本医学放射線科学会総会 Cypos賞 Platinum Medal受賞>
  • Liver imaging reporting and data system (LI-RADS) におけるcapsule所見に着目し、肝腫瘤の病理組織学的評価と診断能に関する検討を行いました。<五十嵐紗耶 助教. 2019年 第78回日本医学放射線科学会総会 Cypos賞 Bronze Medal受賞>
  • Gd-EOB-DTPA注入早期に生じる呼吸の乱れによるアーチファクトが、何らかの薬理作用によって生じる可能性を示しました。<奥村健一朗 医員. 2020年 第79回日本医学放射線学会総会Cypos賞 Platinum Medal受賞>

現在進行中の研究

  • Gd-EOB-DTPA造影MRI肝細胞相画質不良に対する超遅延相画像取得の有用性に関する研究を行っています。<小林知博 大学院生、小林 聡 教授>
  • 肝粘液性嚢胞性腫瘍、嚢胞型胆管内乳頭状腫瘍といった肝嚢胞性腫瘍の画像所見の特徴を検討しています。<小坂一斗 准教授>
  • 非硬変肝に発生する肝細胞性腫瘤である限局性結節性過形成、結節性再生性過形成、大再生結節、肝細胞腺腫、肝細胞癌の鑑別に有用な画像所見を解析しています。<小坂一斗 准教授>
  • 腫瘤形成性肝内胆管癌におけるlarge duct typeとsmall duct typeの血流動態の差異を明らかにし、発癌機序や増殖機序の解明を目指しています。<小坂一斗 准教授>
  • 各種肝腫瘍における脂肪化率やR2*値の定量を行い、脂肪・鉄沈着の特徴を解析しています。<小坂一斗 准教授>
  • 肝細胞癌の各分子亜型に特徴的な画像所見を明らかにし、治療効果予測への応用を目指しています。<北尾 梓 講師>
  • 肝腫瘍画像診断におけるDual energy CTを用いた画像バイオーマーカーの確立を目指しています。<米田憲秀 助教>
  • 肝腫瘍画像診断における標準化診断法の病理組織学的根拠の確立とテクスチャ解析の応用に関する研究を行っています。<五十嵐紗耶 助教>
  • 肝腫瘍画像診断における標準化診断法の新WHO分類に基づく病理組織学的根拠の確立を目指しています。<五十嵐紗耶 助教>
  • 肝硬変の早期画像診断マーカーの確立のため、NASHラットモデルのMRI所見と線維化につながる早期の代謝産物や病理学的変化との対比を行っています。<奥村健一朗 医員>
  • Intravoxel incoherent motion (IVIM)に着目し、肝細胞癌に対する分子標的治療の効果予測に有用な所見の解析を行っています。<張 宇 大学院生>

我々は外科・内科・病理診断科と共に膵がん診療ユニット、肝胆道疾患診療ユニットを形成しています。そこでの詳細な症例検討を元に、膵管癌の早期診断や進展度評価法について報告してきました。近年注目されている胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)や肝/胆道粘液嚢胞性腫瘍(MCN)などの画像解析にも力を入れています。また膵胆道疾患の画像診断のガイドラインや規約の作成にも携わっています。

膵疾患

  • 画像診断ガイドライン、急性膵炎診療ガイドライン、膵癌診療ガイドラインの作成に関与しています。
  • 膵癌の早期診断の鍵となる、膵癌と診断される前の膵に認められるCT所見を報告しました。
    <Toshima F, et al. AJR Am J Roentgenol. 2021 Jun 23. Online ahead of print.>
  • 膵癌においてCTでの膵外進展評価が病理学的な評価よりも優れた予後因子となることを明らかにしました。
    <Toshima F, et al. Eur Radiol. 2021 Jul 14. Online ahead of print.>

現在進行中の研究

  • 膵管癌のIVIM(intravoxel incoherent motion:灌流成分と拡散成分に分けて定量化できる手法)による分化度診断、予後予測の可能性について検討を行っています。
  • 膵がん診療ユニットにおいて切除可能/切除可能境界膵癌患者に対する新規集学的治療の開発を行っています。

胆道疾患

  • 急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドラインの作成に関与しています。
  • 肝腫瘍の経動脈的治療のまれな合併症である胆管壊死の病態生理と画像診断のまとめを報告しました。
    <Kobayashi S, et al. Cancers (Basel). 2020 Sep 11;12(9):2596.>
  • IPNBの1型と2型の画像所見の特徴を明らかにし、両者の鑑別点を報告しました。
    <Komori T, et al. Eur Radiol. 2019 Jun;29(6):3132-3140.>
    <第77回日本医学放射線学会総会 Bronze medal受賞>
  • 胆管の微小構造である胆管周囲付属腺が関与する胆道疾患の画像所見のまとめを報告しました。
    <Matsubara T, et al. Abdom Radiol (NY). 2020 Feb;45(2):416-436.>
    <102th Radiological Society of North America. Magna Cum Laude受賞>

現在進行中の研究

  • 嚢胞形成型のIPNBと肝/胆道MCNの画像所見の特徴を明らかにし、両者の鑑別点を検討しています。
  • 急性胆管炎診断における腹部ダイナミックCT検査の有用性を検討しています。

IgG4関連疾患は全身のあらゆる臓器に発生する全身性炎症性疾患であり、血清IgG4値が高値でPSL治療が奏効するといった特徴が知られています。当科からはこれまで病理組織像との詳細な対比による肺病変、動脈周囲病変、神経周囲病変の画像所見について報告してきました。現在も画像所見の解析を進めることにより、この疾患の病態の解明に取り組んでいます。

  • IgG4関連疾患235例の解析を行い、罹患臓器分布、再発の有無、悪性腫瘍の合併率などを明らかにしました。Inoue D. et al. Medicine (Baltimore). 2015Apr; 94(15):e680.
  • IgG4関連疾患において胸椎近傍に板状腫瘤を形成することを発見し、その画像所見、罹患椎体や病変部位について明らかにしました。AJR Am J Roentgenol. 2019 Sep;213(3):W99-W104. Inoue D., et al.
  • IgG4関連疾患で罹患頻度の高い涙腺顎下腺病変について超音波所見を病理標本との比較で明らかにし、併せてCTに比較して診断精度が高く、臨床に有用であることを明らかにし、報告しました。Komori T, Inoue D., et al. Modern Rheumatology. In press.

現在進行中の研究

  • 画像診断による限局性自己免疫膵炎膵炎と膵癌の鑑別
  • IgG4関連後腹膜線維症の画像解析および罹患部位による合併症の頻度の解析
  • IgG4関連疾患肝胆道系病変の画像解析

画像機器の進歩は医学の進歩そのものです。現在広く世界に普及する超音波、CT、MRI等の画像機器の登場により、約50年で急速に医療のwork flowが変化し、医療は成熟しました。次世代の画像機器の登場を招くべく小林聡教授が中心となり医工連携プロジェクトとして新たなる画像機器の開発に取り組んでいます。

Gravity-MRIを使用した画像生理学の研究

金沢大学保健学類の宮地利明教授・大野直樹助教らのグループが開発した、任意体位保持が可能なMRI「グラビティMRI」を使用して重力環境の違いが解剖や生理機能に及ぼす影響を定量的、定性的に解析しています。これまでのMRIとは異なり、仰臥位で撮影する必要が無く、立位あるいは座位といった日常活動に近い状態での撮影が可能となります。

Photon-counting CT(PCCT)の実用化に関する研究

金沢大学先端宇宙理工学研究センターの有元誠准教授、早稲田大学応用物理学科の片岡淳教授のグループとの共同研究として次世代型PCCTの実用化に関する基礎研究を行っています。従来のX線CTはX線が電気信号に変換されるまで複数の過程が必要でした。PCCTでは、検出器に入射するX線を直接電気信号へ変換し、かつX線フォトンをエネルギー毎に分けた収集を行います。例えるなら、音楽媒体がアナログ録音からデジタル録音になる様なものだと考えてください。PCCTにより、透過物質のエネルギー情報から複数種の物質分別が可能となり、さらなる高分解能化や被曝低減が期待されます。

深層学習を用いた画像診断・処理技術の開発

金沢大学電子情報通信学系の今村幸祐准教授、金沢大学医薬保健研究域附属AIホスピタル・マクロシグナルダイナミクス研究開発センターの田中利恵准教授、熊本大学大学院生命科学研究部の白石順二教授と共同研究を行なっています。画像診断に対するartificial intelligenceは、放射線科医の読影業務を支援します。疾患の見逃し防止、読影精度の向上、読影時間の削減などの業務効率化が期待されます。近年、世界中の研究機関や企業で急速に知見が集積されています。

次世代超音波に関する研究

金沢大学理工研究域の米山猛特任教授、理工研究域フロンティア工学系の渡辺哲陽教授と共同で超音波用シート状プローべ制作の共同研究しています。超音波検査の最大の長所は患者さんの移動が不要で、ベッドサイドでも検査が可能な事です。シート状のプローべを用いる事で、まるで心電図を計測する様に簡便に超音波検査を行う事ができるようになります。また、これまでは光音響超音波の生体応用への動物実験も行ってきました。

これまでの主な業績の抜粋

立位では肝臓の門脈血や大静脈、大動脈の血流が低下することをMRIで明らかにしました。
<Kadoya Y, Kobayashi S, et al. J Magn Reson Imaging. 2019 Jul;50(1):83-87.>
<Kadoya Y, Kobayashi S, et al. Acta Radiol. 2021 Aug;62(8):1122-1128.>

PCCTを用いてヨードとガドリニウムに対してイメージングを行い、その濃度を評価しました。
<Murahashi T, Kataoka J, Arimoto M, Kawashima H, Kobayashi S, et al. Nuclear Inst. and Methods in Physics Res, A 958 (2020) 162801.>

Photocounting CTや深層学習に関する科学研究費を獲得しています。
科研費 基盤研究(B)https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K22924/
科研費 基盤研究(C)https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-21K11958/
科研費 基盤研究(C)https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19K08155/

現在進行中の研究

立位、座位時の腹部臓器形態や循環等の生理機能を客観的に観察することで、重力の及ぼす影響を解析しています。

  • Photon counting CT (次世代CT)とDual energy CT (従来型CT)の対比を行いながら、photon counting CTの実用化に取り組んでいます。PCCTの研究は国立研究開発法人科学技術振興機構における戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO)プロジェクトの一環で行なっています。
  • MRI画像から肝臓の線維化のステージをニューラルネットワークによって判定するシステムの構築に関する研究を行っています。
  • 肺がんCT検診データベースを用いた呼吸器疾患のコンピュータ支援診断に関する研究を行っています。
  • シート状超音波プローべを動物を用いたin vivoモデルで評価しながら、技術的課題を改善し実用化に向けた取り組みをしています。

画像診断を臨床業務とする放射線科は、人工知能(AI)の導入が最も期待される領域の一つとされています。臨床では既に薬事法の認証を得たAIソフトが発売され普及が期待されます。また研究分野においても画像検査におけるAIを用いた研究が活発に行われています。当科では、AI技術を用いた画像診断支援や研究開発を行っています。

現在進行中の研究

当院の単純写真、CT、MRIなどの医用画像データを用いて、病変/臓器抽出、計測、分類など画像診断支援のためのAI研究開発を行っています。

軟部肉腫の術前画像診断に関する研究

悪性軟部肉腫はその高い局所浸潤性のために切除後の局所再発の頻度が高く、初回手術における適切な切除範囲決定が非常に重要です。術前画像診断として造影MRIによる形態診断が主となりますが、正確な腫瘍進展範囲の把握が困難である症例が多く存在します。放射線科では、整形外科、病理診断科と協力して、画像と病理の解析を行うことにより、最小範囲での完全切除を目指した画像診断法の確立に向けて研究を行っています。

膝前十字靭帯術後の再建靭帯の成熟度に関する研究

MRIの新しい撮像法であるUltrashort echo time(UTE)を用いたT2*マップを用いて、従来定量的には観察不可能であった再建靭帯の成熟過程を評価する研究を行っています。今までの研究で、靭帯と腱ではT2*値が異なることがわかりました(Okuda M, et al. Acta Radiol 2021)。現在は、前十字靭帯再建術を施行された方を対象として再建グラフトのT2*値による定量的な評価を行い、術後経過期間との関連、靭帯化の過程についての評価を行っています。

骨軟部腫瘍の画像診断

金沢大学病院は北陸地方における骨軟部腫瘍の中核病院であり、稀な骨軟部腫瘍症例が集まっています。種々の腫瘍について画像や病理との対比などの臨床研究を行っています。

  • デスモイドの画像診断と臨床に関する研究(奥田実穂ほか、第78回日本医学放射線学会総会教育展示優秀賞)
  • International Skeletal Radiology annual meeting(46th Voncouver, 48th Web)において、稀少症例をCase presentationとして発表しています。

腎癌、膀胱癌、前立腺癌は頻度の高い泌尿器悪性腫瘍であり、病変の発見、癌の診断、病期診断においてCTやMRIを中心にした画像診断が重要な役割を果たしています。当科では主にCTやMRI画像を用いて、腎腫瘤の良悪性の鑑別や病期診断、膀胱癌の筋層浸潤の有無の評価、前立腺癌の病変検出や悪性度診断を中心に、当院の臨床データを用いて研究、解析しています。また前立腺癌の骨転移の診断を目的として保険収載された全身MRI撮影の画像データを用いた研究に取り組んでいます。

腎癌症例におけるCTでの尿管との関連性に関して、臨床データを用いて解析し、その特徴を明らかにしました。
<Urinary collecting system invasion on multiphasic CT in renal cell carcinomas: prevalence, characteristics, and clinical significance. Takamatsu A, Yoshida K, Obokata M, Inoue D, Yoneda N, Kadono Y, Kobayashi S, Gabata T.
Abdom Radiol (NY). 2021 May;46(5):2090-2096>
<Renal pelvic and ureteral wall thickening in renal cell carcinoma: prevalence, cause, and clinical significance. Yoshida K, Hamaoka M, Kobayashi S, Matsumoto J, Inoue D, Yoneda N, Gabata T. Jpn J Radiol. 2019 Dec;37(12):832-840>

現在進行中の研究

MRI画像における前立腺癌の検出と悪性度診断に関して、PIRADSや病理所見と対比し解析を行っています。
全身MRI撮影における病変検出や定量化に関する解析、検討を行っています。

02.IVR(画像下治療)

画像をガイドとして治療を行うIVRでは、病変や病態を把握するための画像が最も重要なツールです。また、カテーテルや塞栓物質、ステントといったデバイスの進歩が治療効果につながります。IVRに役立つ画像や新たなカテーテル技術、塞栓方法などに関する研究を行なっています。

図:光音響画像による腸管虚血評価

腫瘍や出血などに対してカテーテルを通じて治療を行う血管塞栓術では、病態に応じた塞栓物質や塞栓方法の選択が治療効果の向上に繋がります。また、カテーテル技術の進歩によりこれまでは治療困難であった病態でも治療することができるようになっています。
血管塞栓術の治療効果を高めるために、新たな画像や塞栓方法、カテーテル技術の開発を行なっています。

  • 難渋するB-RTOに対して、遠位端可動型マイクロカテーテルを用いたCARTOの有用性を報告しました。
    <CVIR Endovasc. 2020 Jun 14;3(1):30.>
  • 重篤な医原性肝A-Pシャントの発達と塞栓術に関する報告をしました。
    <Acta Radiol . 2021 Jun 14:2841851211023995. >
  • 経動脈的手技の際の造影剤腎症に関する基礎的検討を行い受賞しました。
    <第48回日本IVR学会総会Gold Medal>
  • 腎臓、腸管虚血の画像評価に関して、光音響画像の有用性を動物実験で明らかにし、受賞しました。
    <第77回日本医学放射線学会総会Cypos賞 Bronze Medal>
    <第79回日本医学放射線学会総会Cypos賞 Bronze Medal>

現在進行中の研究

ステントグラフト治療後の大動脈瘤径増大に関与する重篤なエンドリークを示唆する画像マーカーを模索しています。

多施設共同研究

腹部ステントグラフト内挿入術後のタイプⅡエンドリークに対するIVR:技術的側面と予後についての後方視的研究に参加しています。

図:ラット肝細胞癌モデル光音響画像

生検、ドレナージ、RFA・凍結療法などでは超音波やCTといった画像をガイドとして穿刺を行います。安全に穿刺するための画像やデバイスの開発が求められています。

超音波画像内で腫瘍を穿刺対象とした場合に、腫瘍の描出を明瞭にする手法として光音響画像の有用性が役立を動物実験で明らかにしました。
<Eur Radiol Exp. 2018;2(1):5.>

現在進行中の研究

超音波画像下穿刺の際に、金属針の種類によっては超音波画像内での描出不良のことがあります。光超音波で針の描出や腫瘍の描出を向上させる取り組みが検討されています。

国際放射線防護委員会2011年声明において眼の水晶体被ばくの線量限度が大幅に引き下げられました。水晶体被曝の適正な管理をすることが求められています。IVR手技中に着用する放射線防護メガネは製品によりその性能や装着感が異なります。

現在進行中の研究

各種放射線防護メガネの実臨床における水晶体被ばく線量評価を行なっています。

多施設共同研究

ハイブリッド手術における医療従事者の水晶体被曝線量評価に関する多施設共同研究に参加しています。

03.放射線治療

定位放射線治療や強度変調放射線治療などの高精度な治療において、より精密で、マーキングなどによる患者さんの負担の少ない照射を施行するために、2018年より光学式体表面スキャニングシステムを導入し、これを用いた放射線治療セットアップに関する研究を行っております。また、日常臨床においてより適切な治療法を提供するために役に立つよう、前立腺癌や子宮頚癌における臓器線量と有害事象の関連性についての研究に注力し、前立腺癌に対する小線源治療・外部照射併用療法の全国的な多施設共同研究に参加しています。加えて、当科の関連施設である福井県立病院陽子線がん治療センターとも連携し、陽子線に関する研究にも力を入れています。

  • 前立腺癌に対する外照射を併用した高線量率組織内照射療法の多施設共同遡及的観察研究
  • 前立腺癌に対する強度変調放射線治療(IMRT)における臓器線量と有害事象発現に関する後方視的研究
  • 子宮頸癌に対する画像誘導小線源治療(IGBT)における臓器線量と有害事象発現に関する後方視的研究
  • 悪性神経膠腫に対する放射線治療後の再発様式に関する後方視的研究
  • 陽子線治療後肝癌の画像変化と治療効果判定方法の研究
  • 陽子線治療による積層原体照射法の有用性の検討
  • 前立腺癌に対する A 群:外照射を併用した高線量率組織内照射療法と B 群:外照射単独の比較研究(多施設共同遡及的観察研究)観察研究
  • 乳癌術後放射線治療における適切な照射法に関する後方視的研究
  • 転移性骨腫瘍に対する放射線治療における臓器線量と有害事象発現に関する後方視的研究
  • III期非小細胞肺癌に対する放射線治療について
  • 肝細胞癌に対する放射線治療の有用性の検討
  • 光学式体表面スキャニングシステムを用いた放射線治療セットアップの有用性の検討
  • 前立腺癌に対するI125シード挿入療法における照射線量と治療効果および有害事象に関する後方視的研究

放射線治療において、ターゲットの照射線量を担保するため、周囲の危険臓器の線量を抑えるために、臓器の呼吸性移動に対する対策は非常に重要です。当院では、胸腹部の運動を測定する装置を用い、呼吸性移動の放射線治療に与える影響を研究しています。

呼吸性移動量の抑制に対して呼吸停止技術を用いた高精度放射線治療の基礎的な精度を明らかにしました。
<高松 繁行ら. 臨床放射線53,1244-1250,2008.>
<Takamatsu S et al. Jpn J Radiol 31,357-63,2013.>

呼吸停止技術による呼吸性移動量を抑制した強度変調回転放射線治療(VMAT)の有効性を明らかにしました。
<Noto K et al. Journal of Radiotherapy.;Article ID 743150.2014.>
<Takanaka T et al. BJR Case Rep.;2:20160087.2016.>

肝臓の呼吸性移動量について外科手術が与える影響について検討を行い、外科手術後は一部の区域で呼吸性移動量が減少することを明らかにしました。
<Shimizu Y et al. Jpn J Radiol. 2018;36(8):511-518. doi: 10.1007/s11604-018-0750-3.>

難治性である局所進行前立腺癌に対して外部照射、小線源治療、内分泌療法を組み合わせたハイブリッド治療の研究を行っています。当院での進行前立腺癌に対する高線量率小線源治療+外部放射線治療+内分泌療法での治療成績、合併症について検討し、治療の有効性を明らかにしました。

前立腺癌に対する高線量率小線源治療単回照射と外部放射線治療との併用療法における治療効果及び有害事象を検討しました。
<Sakurai T et al. Jpn J Radiol. 2020;38(12):1197-1208.>

高リスク前立腺癌に対するI-125シード線源永久挿入術とVMATによる外照射併用療法における直腸有害事象を検討しました。
<Sakurai T et al. Brachytherapy. 2021:S1538-4721(20)30294-4.>

局所進行前立腺癌に対する高線量率小線源治療と外照射併用の治療成績を検討しました。
<Makino T et al. Int J Clin Oncol. doi: 10.1007/s10147-021-02023-6.>

放射線治療における位置のセットアップには、X線画像を用いる事が一般的ですが、当院では2018年より光学式体表面スキャニングシステムを導入致しました。これを用いた無被ばくでの高精度な放射線治療セットアップに関する研究を行っております。

光学式体表スキャニングシステムを用いた無被ばく高精度放射線治療での精度を基礎的に検証し、明らかにしました。

<Kojima H et al. J Appl Clin Med Phys. 2021;22(2):58-68.>
<高松繁行:映像情報medical 51(11), 21-25, 2019.>

転移性骨腫瘍に対する放射線治療の予後因子を検討し、その簡易的な予後予測方法について検討しています。

当院での骨転移治療症例についての治療成績、予後、合併症について評価し、簡易的な予後予測評価方法の有用性を明らかにしました。
<高松 繁行: 骨転移に対する放射線治療の画像的予後因子は何か?Q&Aでまとめる!予後予測・治療効果予測の画像検査; 臨床放射線(65巻 08号)2020年08月臨時増刊号 2020.>

陽子線治療は、その物理学的な特性や、X線抵抗性腫瘍に対し高い治療効果を持つことから、有効な疾患に対する高い効果が期待され、様々な疾患に対する治療が研究されています。
当院では、福井県立病院陽子線がん治療センターと共同研究を行い、陽子線治療の研究を行っています。

腫瘍サイズの大きい肝細胞癌(5㎝以上)に対する陽子線治療成績を明らかにしました。
消化管に近接する肝細胞癌に対する陽子線治療効果を明らかにしました。
<Mizuhata M et al.Cancers 10, 58. doi: 10.3390/cancers10020058, 2018.>
<Shibata S et al. Cancers 10, doi: 10.3390/cancers10030071,2018.>
<高松繁行:基盤研究(C)「陽子線治療後肝癌の画像変化と治療効果判定方法の研究」;16K10273. 2016-2018年>

前立腺癌での陽子線治療におけるCT位置決めを用いた高精度陽子線治療の有用性について明らかにしました。
<Maeda Y et al. J Appl Clin Med Phys. 2020;21(10):109-121.>
<Maeda Y et al. Med Phys. 451844-1856, 2018.>

現在進行中の研究

  • 転移性肝癌に対する陽子線治療の治療効果とその治療後画像変化について( 高松繁行:基盤研究(C)「転移性肝癌に対する陽子線治療後画像変化と治療効果判定方法の研究」;20K08018. 2020-2022年)
  • 光学式体表スキャニングシステムを用いた無被ばく高精度放射線治療の有用性の検討